ミュージック広場
music square
ミュージック広場
Music square
「ヒットメイカー 筒美京平の世界」
今月からmusic広場にいろいろなアーティストを紹介させて頂きます。寄稿頂きますのは佐々木隆行さんです。佐々木さんは飯より音楽が大好きという音楽人間です。その感性と音楽に対する情熱は多くの人々に共感を持って頂ける事と思います。
中山美穂
中山美穂 「WAKU WAKUさせて」 1986年
1986年。昭和の最末期は、今振り返るとメチャメチャ元気な時代でした。元気じゃない人も、元気なフリをしなければいけない空気がありました。
「明るい」が最上の価値、「暗い」は人としてイチバン最低。今とは全く真逆のインフレマインドが日本中を覆っていました。
そんな時代を体現していたのが「ミポリン」でした。
70年代までのアイドルは、あからさまに中年男性主体の芸能マスコミに、性的いやがらせを受けながら、自らはあくまでも処女性を失ってないふりをしなければいけない、という存在でした。
80年代に登場した松田聖子/中森明菜も、まだぎりぎり、その残滓を引きずっていたと言えます。
しかし、弱冠15歳で登場した中山美穂は、そんな淫靡な芸能界の暗部を完全に払拭したのです。
まだ中学生ながら、完全に大人の雰囲気を纏った彼女は、あっさり言うと完璧な美人でした。
50歳に近づいた現在でも、堂々たる美貌ですが、十代にして、顔立ちが完成されており、また、そんな自分に対するナチュラルな自信を心置きなく享受して、これ以上ない程、充実感にみち溢れていました。
「WAKU WAKUさせて」は、16歳ながら大人の世界に難なく食い込み、ノリにノッている彼女の煌びやかさを、京平先生が余すところなく表現した8枚目のシングルです。
「頭ン中 Upside down」「地味っぽい顔はやめて」「生きかたを派手にしなよ」「みんな臆病過ぎるわ」「マジっぽい恋はいやよ」
松本隆もらしくない、イケイケのフレーズを連打しますが、中年男性作詞家の性的いやがらせには全くならない程、ミポリンの勢いのほうが勝っています。